2013 AUTOBACS SUPER GT ROUND6

開催地:富士スピードウェイ/4.563km

97日(予選)天候:曇り

コースコンディション:ドライ 観客数:19,500

98日(決勝)天候:曇り一時雨

コースコンディション:ドライ〜ウェット 観客数:32,800

 

激動のレース展開に素早いピットワークが功を奏し、2位入賞果たす

 

スーパーGT6戦は、富士スピードウェイが舞台。「Panasonic apr PRIUS GT」が第2戦で初優勝を飾った、相性抜群のコースである。だが、ハイブリッドGTによるスーパーGTでの初優勝という歴史的快挙にもなったものの、その後のレースは御難続き。相次いだトラブルにより、ポイントを重ねられずにいる。そこで今回は、今まで以上にマシンへの対策や見直しが徹底的に行われた。

ここでもまた苦戦が続いたならば……、そのことが意味するのは、チャンピオン争いからの脱落。新田守男選手や嵯峨宏紀選手にとっては、もはや背水の陣となってはいたとはいえ、コースとの相性の良さは巻き返しをはかる上での、心強い要因でもあった。レース距離は再び300kmとなり、約2時間の高速バトルに期待が込められた。

公式練習 97日(土)9:00
富士では第2戦で優勝を飾ってはいるものの、その後JAF GTに対しては第4戦からリストリクター径の1ランク縮小が、そして第5戦からは8mmの車高アップが命ぜられることに。それが続く苦戦の理由ではないにせよ、マシンのバランスを悪化させているのは間違いない。それゆえ気象的なコンディションの違いも含め、データの流用が効きにくいのは痛手であったが、1か月前に公式テストが行われ、そこでは修正も行われた。土曜日の午前、走り始めとなる公式練習では、さらなる煮詰めを行うところからスタートとなった。

最初にステアリングを握ったのは、いつものとおり新田選手。1周のチェックを行なった後ピットに戻り、10分目から本格的に走行を開始する。途中2回の赤旗中断はあったものの、「Panasonic apr PRIUS GT」にトラブルはなく、セット変更を行うたび、順調にタイムは縮まっていく。そして1分41130411634105341091と、40秒台が見えてきたところで嵯峨選手へとバトンタッチ。

ラスト10分のGT300単独の時間帯も含め、ラスト30分をロングランに充てた嵯峨選手。連続8周をきっちり決勝ペース想定の42秒台で刻んで、一度ピットに戻った後のラストラップに41752をマークして、公式練習の締めとした。

公式予選Q1 14:0014:15
今回もノックアウト予選のQ1担当は新田選手。公式練習では決勝に向けたセットこそ詰められたものの、予選に関してはやや不満も残ったこともあり、開始直前にセット変更をすることに。気温は25度、路面温度は33度と、このところ続いていた猛暑からはようやく逃れられたこともあり、タイヤへの負担は極めて抑えられている。そこで最初の4周はバッテリーにしっかり電気を貯めつつ走行、ポジショニングを整えて5周目から本格的にアタック。

その結果、それまでの44秒台から、一気に39926へとタイムアップ。ポジションも3番手に。続けてもう1周、チェッカー間際に攻め込むも、40234へとダウン。逆にこのタイミングで短縮を果たした車両が3台もあったため、6番手へと後退することとなるが、「Panasonic apr PRIUS GT」は無事2戦ぶりのQ1突破には成功、直前のセット変更が効いたのは言うまでもない。

公式予選Q2 14:4014:52

Q2に挑んだのは、もちろん嵯峨選手。気温はQ1と変わらず25度、路面温度は1度だけ下がった32度と、ほぼ同じ状態での走行となった。新田選手からのインフォメーションを受け、セットにも微調整が。ここでもまずはバッテリーへの充電を行いつつ、嵯峨選手はしっかりとポジショニングを整える。ところが、誤算だったのはその充電にやや時間がかかってしまったこと。

 5周目からアタックを開始したものの、その間にタイヤの内圧が上がり切らず、出たタイムは40065と、新田選手にも及ばず、ラスト1周に短縮の期待を込めるも、40692とタイムダウン。その結果、「Panasonic apr PRIUS GT」は9番手、5列目のグリッドから決勝レースに臨むこととなった。

新田守男選手

「公式練習では決勝に向けたセットはともかく、予選に関してはちょっと不安を残していたので、直前にセットを変えたら、それがそんなに悪くなかったんですよ。もう少し行きたかったけど、僕らが想像していたよりもタイムが良かったので、宏紀にはもうちょっとアジャストした上で行ってもらいました。だけど、ハイブリッド関連がどうもまだ完全な状態ではなかったようです。決勝に向けたセットはある程度見えていますし、レースはしっかり戦えるところにいると思います。自分でも期待しているので、頑張りますよ!」

嵯峨宏紀選手

「前回の富士の結果が良かったこともあって、非常にいいイメージを抱いていたのですが、実際には苦戦しているという状況で。ハイブリッドには大きな変化はないので、タイヤのマッチングが今ひとつ噛み合っていないのかな、というのを感じています。予選に関してはバッテリーの充電に時間がかかり過ぎてしまい、タイヤの内圧をうまく合わせられなかったので、不完全燃焼なアタックになってしまい、残念です。決勝に向けては公式練習のロングのタイムは悪くないので、日曜のフリー走行も使って、よりベストな状態を探していきます。」

金曽裕人監督

「新田選手の予選は想定以上のタイムを叩き出した。何年も一緒にレースをしているが久しぶりに感動した。ワンチャンスである1周にマシンのピークを持って行き、ドライビングは完璧であり、これぞ最高峰のプロ!

JAF‐GT勢は、2戦目の富士とは違い前戦から性能調整が入り、特に我々NAエンジンは非常に影響が出ている。予選に関してはTURBOエンジン車の様に予選ブーストや特殊な予選用ハイブリッドシステムはPRIUSには存在しないので非常に不利である。でも我々にはドライバーのブーストが存在してると今回改めて認識しました。決勝はあの手この手で全員のパフォーマンスを出し切り表彰台を目指しますので応援宜しくお願いいたします!」

決勝日・フリー走行 98日(日) 9:009:30
日曜日の早朝に行われたフリー走行でも、「Panasonic apr PRIUS GT」のステアリングを最初に握ったのは新田選手。土曜日までは何とかドライコンディションが保たれていたが、ここではついにウェットコンディションとなってしまう。天気に関する情報は錯綜し、決勝はドライともウェットとも予測がつかない状況であったため、まずはレインタイヤの選定を行うことに。どうやら最初に選んだタイヤが、このコンディションにはマッチしていたようで51755がベストタイムとなる。

残り10分を切ったところで、嵯峨選手にバトンタッチ。その後に行われたサーキットサファリにも嵯峨選手は走行し、雨もやんでコースの水量も減ったことから、51秒台の前半にまでタイムを詰めることに成功する。

決勝レース(66周)14:00
フリー走行の終了から間もなく、雨は完全にやんで路面は徐々に乾いていき、スタート進行直前に行われたサポートレースでは、ついにスリックタイヤが履ける状態にまで転じていた。温度も合わせて上昇し、気温は29度、路面温度は35度と、このレースウィークでは最も高くなる。8分間のウォームアップには、スタートも担当する新田選手が1周だけ走って最終確認を行った。レース中には雨がまた降るというのが大方の予想だったが、いつ降るのか、そしてどの程度の強さなのか。それ次第で勝敗が大きく左右される可能性は、十分にあった。

スタート直後の波乱はなく、「Panasonic apr PRIUS GT」の新田選手は、まずはポジションキープからレースを始めることになる。5周目にチームメイトの「IWASAKI OGT Racing GT-R」の先行を許すも、レースはまだ序盤。新田選手は機の熟すのを待つ。この堪えが効いて、先行車両の脱落もあり、15周目には8番手にまで浮上。

それから間もなく、GT500車両がストレート上でタイヤのバーストによってクラッシュ。19周目からセーフティカーがコースに入る。残る周回は40周以上あり、また雨がいつ降り始めるか分からない。21周目からのピットレーンオープンで入るか、入らないか判断に苦しむところではあったが、チームは新田選手を呼び寄せることに。

4番目に入ってきた「Panasonic apr PRIUS GT」は、スタッフの素早い作業によって、2番目にピットを離れることに成功。このまま雨が降らないでくれれば、上位進出は確実ながら、ステイアウトした車両もほぼ半数に及んでいたため、雨が降れば惨敗は必至。

22周目にはセーフティカーがパドックに戻って、バトルは再開。この段階で交代した嵯峨選手は13番手。26周目には一台をかわすも、それから間もなく雨が降り始める。作戦は失敗だったのか。しかし、幸いにしてその雨はそう勢いを強めず、「Panasonic apr PRIUS GT」が履くヨコハマタイヤのスリックに最もマッチした。上位陣がやむなくスリックタイヤに交換して、次々とドライバー交代を行う中、徐々に順位を上げて行く嵯峨選手。そして全車終了の42周目には2番手に浮上する。

その後、トップこそ逃がしてしまったものの、後続との間隔は一定を保って走行。4番手以下の順位が目まぐるしく変化するのを尻目に、まったく危なげない走りを見せて62周目にチェッカーを受ける。その結果、「Panasonic apr PRIUS GT」は2位でゴール。ランキングトップとの37ポイント差を25ポイントまで詰め、残り2戦に大逆転の可能性を残すこととなった。

新田守男選手

「久々に入賞を果たせました! セーフティカーが出て、いいタイミングでピットに入ってドライバーチェンジしましたし、ピットワークもすごく早かった。本当にメカニックはいい仕事をしてくれて、その後の宏紀も、難しいコンディションの中、安定して走って頑張ってくれました。実はトラブルが途中から出ていたんですよ、クラッチが貼りついた状態になっていて。セーフティカーが入った時には症状が出ていたんで、普通のクルマだったら宏紀は再スタートできなかったでしょう。だけど、うちのはハイブリッドなんで、モーターでね。それを交代前に伝えていたので、無事コースに戻ってもらえました。走ってしまえば、特に大きな問題ではなかったですからね。久々の入賞が表彰台なので、ちょっとホッとしているのと、選手権にもまた少し可能性が出てきたという点では嬉しく思います。」

嵯峨宏紀選手

「セーフティカーのタイミングでドライバー交代して、その後はすぐ前に4号車がいて。その時点では、まさかあれが事実上のトップ争いになるとは、夢にも思わなかったですね。やはり4号車はドライバーの力がすごくて、ちょい濡れの中、スリックタイヤという状況ではマシンのポテンシャルよりドライバーズレースになるというのが定説ですけど、自分としては離されてしまったんで……。まだ自分の技術が足りないなぁ、というのを実感させられました。それはまぁ、課題を見つけて、もっと速くなれるよう努力していきます。だけど、久々にしっかりレースできて完走し、2位表彰台というのはすごくいい順位だと思うので、残り2戦も気を引き締めて、また表彰台に立てるよう頑張ります。」

金曽裕人監督

「決勝は嵯峨選手のパフォーマンスとメカニックのパフォーマンスが強烈に素晴らしかった。それと運! セーフティーカーが出た時点で西の空は暗く、今にも雨が落ちそうな状況であり雨を待ってコース上に留まるか、博打でもピットに入れてドライバー交代を行うか散々悩んだ。結果この後、雨が降ってもドライビングに於いては絶対的な安心感ある嵯峨選手なら大丈夫と信じ それに賭ける事とした。事実、小雨になりABSやトラクションコントロールという電子デバイスが無いPRIUSにとっては非常に難しいコンディションとなった。前を行く61号車も雨に足元をすくわれスピンし後退。その後もコースアウトが相次ぐ中、41LAPもの長いスティントを嵯峨選手は完璧なドライビングでチェッカーまで運んでくれた。チェッカー後、優勝した4号車に追いつかなかった事を悔やんでいたが、電子デバイス満載のFIA-GT3車両に小雨で追いつく訳が無いと納得させた。今シーズンまともにレースをできたのが2回。その2回が表彰台であり、我々はその問題が一番大きい。残り2戦となりましたが、2回とも優勝する気持ちで取組みますので変わらぬご声援、宜しくお願いいたします。」