2013 AUTOBACS SUPER GT ROUND7

開催地:オートポリス/4.674km

105日(公式練習)天候:雨

コースコンディション:ウェット 観客数:11,600

106日(予選&決勝)天候:曇り

コースコンディション:ドライ 観客数:22,100

 

悪天候に翻弄されたオートポリス。今季ワーストグリッドから執念の完走を果たす。

 

九州唯一の公認サーキット、オートポリスが舞台となったスーパーGT第7戦。阿蘇山中に位置するサーキットは、まわりを緑で囲まれた非常に風光明媚のロケーションと、ヨーロッパ風のレイアウトを何よりもの自慢とする。アップダウンに富んだテクニカルレイアウトは、ストレート以外は絶えず切り続けていなくてはならず、特にセクター3と呼ばれる最終セクションは上り続けながら左右に切り返されるため、ここを攻めきれるかでタイムは大きく左右される。

新田守男選手と嵯峨宏紀選手の駆る「Panasonic apr PRIUS GT」は、今シーズン不運な展開に見舞われ続けていたものの、前回の2位入賞で再び勢いを取り戻していた。ウエイトハンデが半減される今回は、その勢いを保てる可能性は十分にある。引き続きの大活躍が期待された。

公式練習 105日(土)9:00
搬入やブリーフィングが行われた金曜日は、爽やかな天気に恵まれたものの、土曜日になると一転。早朝からサーキットは雨に見舞われたばかりか、霧にもすっぽりと包まれてしまう。午前9時からの公式練習は霧が薄くなったことからスケジュールどおりスタートし、「Panasonic apr PRIUS GT」は新田選手から走行を開始。1周のチェックの後、ピットに戻り、再び走行して28766をマークするも、その直後にGT500車両のクラッシュがあり、赤旗によって計測が中断される。

10分後に再開されるも、その間に雨足はさらに強くなっており、走る車両はごくわずか。「Panasonic apr PRIUS GT」もピットで待機する。さらに霧も再び濃くなっていたこともあり、45分経過したところで視界不良のため、再び赤旗が出されることに。天候は回復せず、そのまま終了に。セッション終了から25分後に「14時まで待機。不可能な場合は改めてスケジュールを発表」とのアナウンスが流される。

そして1350分、天候回復が見込めないことから、予選の中止が正式に発表。日曜日の9時から25分間の予選が行われることとなった。また、1430分から30分間、ピットロードが開放されて、ファンサービスが行われた。

公式予選 106日(日)9:009:25
大幅なスケジュールの変更によって、今回の予選は1セッションのみ、ドライバーひとりだけの走行で行われることになった。天候は日曜日になって回復していたが、路面にはまだウェットパッチが残った状態。だが、限りなくドライに近いとチームは判断し、「Panasonic apr PRIUS GT」にスリックタイヤを装着して、新田選手をコースに送り出す。入念にウォームアップを行なった後、ピットに戻らずアタックに入る予定だったが、ボンネットが開きかけていたため、わずか1周でピットイン。そのタイミングで合わせてタイヤも交換する。

すぐに2分を切った新田選手ながら、タイムの伸びは今ひとつ。それでも、じわりじわりと刻み続けて、終了間際には1分50406をマークしたものの、トップから3秒遅れとなる21番手は、今季ワーストグリッド。いきなり厳しい状況に陥ってしまう。

 とはいえ、続けて行われたサーキットサファリで、ようやく嵯峨選手が走行を開始。スタートから一度もピットに戻ることなく、9周のロングランをかけられ、しかもバスと並走する中でもベストタイムの51825を筆頭に、コンスタントにタイムをマークし続けられたことは、決勝に向けて少なからぬ福音となっていた。

新田守男選手

「ちょい濡れの、この厳しいコンディションではABS等の電子デバイスのあるGT3相手だと、もうどうしようもないというか、それとパワーの差を感じましたね。そうは言っても、この状況の中で前に行かなきゃいけないんですけど、予選はあんまりいい感じではありませんでした。今は決勝に向けて、どうできるかというのを、一生懸命探っているところなんですけど……。まぁ、ここは最後の最後でタイヤが厳しい状態になることが多いので、それをいかにコントロールできるか。何としても上位に食い込みたいと思っています。」

嵯峨宏紀選手

「今回、予選を走ることはできなかったんですが、サーキットサファリでクルマのバランスを確認しながら走った中では、そんなに悪い印象ではなかったです。柔らかいと思って持ってきたタイヤが、意外と保ちそうな感じもしましたので。ただ、今回は十分テストができていない分、決勝では臨機応変に作戦をかけていかなくてはならないでしょう。ドライバーとしては、そういう状況にいつでも、どうにでも対応できるよう準備はしておきたい。予選順位は下位ですけど、諦めることなくコツコツ行けば、最低でもシングルには行けると思うので、それ以上の順位も狙える状況をドライバーが作っていければいいな、と思っています。」

金曽 裕人監督

「電子デバイスのABS、トラクションコントロールと、大排気量エンジンを持つGT3勢には、全く歯が立たない状態でした。どのセクターを検証しても、この不安定な路面では勝てているPOINTが無い状態。やはりJAF規則のPRIUS GTは繊細だと痛感いたしました。特にエンジンはレーシングNAエンジンゆえのパワーバンドの狭さが一番響き、少しでもバンドを外すと加速しない状態でした。すぐに改善できる内容では無いので、決勝はドライバーでどこまでリカバリーできるかを期待するしかない。厳しい展開が予測できるが最後まで諦めず1点でも多く獲りに行きます。」

決勝レース(65周)14:00
予選が終了して間もなく、スタートタイヤが発表されるが、指定されたタイヤは不運なことに予選で周回を重ねた方に。そのためスタート進行と同時に行われるウォームアップは7分追加され、15分間となったにも関わらず、十分に周回を重ねることができず、決勝想定タイムの51917はマークしたものの、一抹の不安を残すこととなる。

今回も「Panasonic apr PRIUS GT」のスターティングドライバーは新田選手。好スタートを切ってオープニングラップを終えた時には18番手と、3ポジション上げることになる。4周目にもうひとつポジションを上げた後は2台の宿敵CR-Zと激しいバトルを繰り広げ、そのまま順位を上げていくことが期待された。しかし、10周を過ぎたあたりからペースを上げようにも上げられなくなる。不安は的中し、特にフロントタイヤが音を上げ始めたのだ。

アンダーステアに苦しむ中、必死に新田選手はマシンを操るが、やがて後続車両を抑えることもままならなくなる。20番手にまで後退したこともあり、ミニマムである周回の20周目には早くもピットイン。すでに周回遅れにはなっていたこともあり、もはや勝機はないも同然だが、だからといって手を抜くようなことは許されない。トラブルを抱えて戦列を離れた車両もあったことから、全車がドライバー交代を終えると、嵯峨選手は19番手のポジションに。

46周目にまず1台を、54周目にはさらにもう1台をパス。そして57周目にはクラッシュ車両があって、16番手に浮上する。さらにファイナルラップとなる60周目にも前走車の後退が。もちろん納得の順位ではないものの、予選よりも6ポジションアップとなる15位でレースを終えることとなった。ノーポイントに終わってしまったため、首の皮一枚残されていたチャンピオン獲得の権利は喪失してしまう。だが、全車ノーハンデの戦いとなる最終戦は、ドライバー、マシン、そしてチームの真価を問うことになる。スタッフ全員が勝ってシーズンを締めることを誓っていた。

新田守男選手

「本来の予選日があんな天候だったから、十分なタイヤチョイスができなかったことが最後まで響いてしまいました。今回から新しいタイヤを投入することになっていたんで、余計に・・・・という感じでした。予選とか宏紀の走ったサーキットサファリで良さそうなタイヤは見つかったんですが、スタートタイヤは抽選の結果でそっちではなく、予選で周回した方になってしまって。決勝では予定よりも早くフロントタイヤが終ってしまいました。これでシリーズチャンピオンの権利は無くなってしまいましたが、この苦しい状況の中でもデータは取れたと思うので、それを基に最終戦のもてぎは勝ちに行きます。ただ、そのためにもタイヤもシステムも信頼性をもっと高めていかないと、最終戦どころか来年も同じような状況になりかねない。しっかり対策ができた上で勝てて、『終わり良ければ、すべて良し』と言えればいいですね。」

嵯峨宏紀選手

「新田さんがスタートで履いたタイヤのタレが激しく、特にフロント磨耗からアンダーステアがキツいということで、1/3の周回が終わったところで交代して、僕は後半のロングを硬いタイヤで行きました。それでもフロントタイヤをいたわりながら、まぁ誰かを劇的に抜くわけでもなく、抜かれるわけでもなく、淡々と走ってという感じで。特に大きな展開のないレースになってしまいました。もっとも、レース中のアベレージは正直速くなかったというのが、今回いちばんの反省点。どうにもオートポリスではデータ不足は否めず、ペース的に厳しい部分があったので、オフにテストするなどして、いろんな部分の進化をはからなければいけないと実感しました。」

金曽裕人監督

「なぜだろ?と思うほどペースは上がらなかった。昨年同様GT3勢に対しては劣勢な状況になるとは予測していましたが、ここまで差が開くとは想定外。TEAMは、マシンセット、タイヤ、空力、エンジン、ハイブリッド、駆動系、その全てを最終戦までに検証し 有終の美を飾りたい。」