2014 AUTOBACS SUPER GT ROUND5 富士スピードウェイ

 

開催地:富士スピードウェイ(静岡県)/4.563km

89日 (予選)天候:曇り

コースコンディション:ドライ 観客数:18,500

810日(決勝)天候:雨

コースコンディション:ウェット 観客数:26,500

 

台風接近で天候激変のレースで完走、6位入賞を果たす

 

スーパーGTの第5戦は富士スピードウェイが舞台。シリーズで唯一年に2回開催されるコースで、ゴールデンウィーク以来3か月ぶりのレースとなるが、従来は9月上旬に行われていたのが、この時期に改められたのは10月に、タイでのレース初開催が予定されているため。昨年までは残暑との戦いとなっていたが、今年はまさに真夏の暑さとの戦いになることが予想されていた。

ところが、レースウィークに差し掛かると、暑さ以上に厄介なものが待ち構えていることが明らかになる。それは台風11号。発生当時はそれほど影響をもたらさないと思われていたものの、あまりの歩みの遅さから、週末の日本列島を直撃することとなったからだ。果たして開催は可能なのか、そこまで心配されていたほど。

さて、新田守男選手と嵯峨宏紀選手がドライブする「OGT Panasonic PRIUS」は、今シーズンどうにも御難続き。本領発揮を許されぬばかりか、ここ2戦はトラブルでリタイアすら余儀なくされている。しかし、7月3031日に鈴鹿サーキットで行われたタイヤテストに参加、嵯峨選手と1000kmレースとなる第6戦に第3ドライバーとして出場予定の中山雄一選手によって、タイヤの選定がスムーズに進んだこと、さらに細かい改善に効果が確認されたことは、今後に向けて期待の材料となりそうだ。元来、国内屈指の高速コース、富士スピードウェイは相性の良さで知られてきた。テストでの好印象と合わせ、活躍を予感させることとなった。

公式練習 89日(土)9:0010:50

西日本を中心に、もはや暴走状態であった台風11号ながら、土曜日の富士スピードウェイは奇跡的とでも言うべきか、上空に青空こそなかったものの、まさに小康状態が保たれることとなった。午前中に行われた公式練習は、鈴鹿でのタイヤテストが順調に進んだことを改めて確認させるかのように、トラブルもなくいたってスムーズに進んでいった。今回も最初に「OGT Panasonic PRIUS」のステアリングを託されたのは嵯峨選手。1周のチェック走行の後、ピットでセットの微調整を行うと、そこからは順調に周回が重ねられていく。序盤のベストタイムは1分40306。

40分経過したところで、いよいよ新田選手の番に。タイヤテストには参加していなかったものの、嵯峨選手の施したセットを信頼し、早々とアタックモードに突入。わずか3周で40秒台に入れたばかりか、その次の周には公式練習での最速タイムとなる、40387をマークすることに。そこから先は決勝レース想定のセットに改め、引き続き順調に周回が重ねられていった。ラスト10分のGT300単独セッションでは、再び嵯峨選手が乗り込むことに。やはりコンスタントにタイムが刻まれ、無事に公式練習を終えることとなった。

公式予選 Q1 89日(土)14:0014:15

インターバルに雨が降り、いったん止んだとはいえ、予選を間近に控えて、またいつ雨はまた降り出してもおかしくない状況だったため、「WET宣言」が出されることに。しかし、ことGT300においてはQ2も含め、最後までスリックタイヤで走行されることとなった。今回もQ1担当は嵯峨選手。トラブルを抱えた1台を除き、計測開始と同時に一斉にコースインしていく。

気温25度、路面温度31度は、この時期としては明らかに想定以下。そのため、嵯峨選手はアウトラップだけでなく、ウォームアップを2周も加えることとなった。最初のアタックで41秒台を記し、次の周には39秒台へ。4周に渡って連発するも、ベストタイムは39367と、やや納得のいかぬところ。それでも「OGT Panasonic PRIUS」は11番手につけ、難なくQ1突破を果たすこととなった。

公式予選 Q2 89日(土)14:0915:00

本来1440分から行われるはずだったQ2は、GT500Q1で赤旗中断があったことから9分遅れてのスタートとなった。嵯峨選手のタイムが今ひとつ伸び悩んだのは、タイヤの内圧が上がり切らなかったためだったことから、しっかり走行前に合わせて新田選手は「OGT Panasonic PRIUS」をコースへ進めていく。嵯峨選手からのインフォメーションが的確だったこともあり、新田選手は早々とアタックを開始。40秒台、39秒台と順調にタイムを伸ばし、その次の周にはトップタイムとなる、38414をマークする。

それからまもなく「SUBARU BRZ R&D SPORT」がまったくの同タイムを記すも、その場合は先に記録した方が順位は上。この頃にはコースに小雨が舞い始めていたこともあり、逃げ切りになることが期待された。だが、雨は思いのほかコース状態に影響を及ぼさず、「SUBARU BRZ R&D SPORT」が次の周にタイムアップしたのに対し、新田選手は「ARTA CR-Z GT」に行く手を阻まれる格好となり、その後の更新は許されずに終わる。それでも2番手、フロントローからのスタートは決勝に期待を抱かせる内容であった。

新田守男選手

「正直なところ、タイヤと路面のマッチングが今ひとつで、タイムを出せるところがピンポイントだったんです。なおかつ、雨が降ってきたもので、グリップの感じがおかしくなっていて。それでもタイムは出せそうな感触はあったから、諦めずに攻めていったら実際にタイムは出て、本当はもう1周、もっと行けそうだったんです。けど、その時にたまたま前にCR-Zがいて、引っかかってしまいました。それでも2番手という楽しみなポジションからレースができるので、とにかく完走して、いい結果でレースを終えたいと思います。

嵯峨宏紀選手

「今回持ってきたタイヤが、路面温度がこんなに低くなるとは想定していなかったので、全体的に硬めのレンジだったんです。その中でクルマのバランスを合わせながら走っていましたが、僕の時は思いのほか内圧が上がり切らなくて、タイムが出ませんでした。でも、新田さんの時にはそのあたりアジャストして、いいタイムを出してもらったので良かったです。明日の天気がどうなるか分からないけど、雨だと厳しいかな……。それでも数%の可能性に期待したいと思います。

金曽裕人監督

「チョイスしたタイヤの内圧コントロールが難しい状況であり、嵯峨選手担当のQ1ではグリップも出ず厳しい状況であった。その後の新田選手Q2時にはほぼ満足できる状況ではあったが、少しアタックタイミングが良くなかった。その中での2番手は上々の出来。明日は雨の予報、雨に定評のあるミシュラン、ダンロップタイヤとABSやトラコン等の電子デバイス付きのFIA-GT3マシンにどこまで挑めるか、どこまで順位を守れるか、にチャレンジしたいと思います。」

決勝日・フリー走行 810日(日)9:00

日曜日の富士スピードウェイは朝から生憎の雨模様。それでも9時からのフリー走行が始まる頃は、まだ小雨という状態だった。最初に「OGT Panasonic PRIUS」に乗り込んだのは嵯峨選手だったが、開始から3分で赤旗が。雨量増加が原因で、9分の中断の後再開される。その後は少し陽も出て、雨も弱まったこともあり、嵯峨選手はこの週末に初めて履くウェットタイヤの感触を確かめつつ、着実にタイムを刻んで51836を記した後にピットイン。最後の1周だけ新田選手が走行する。

続けて行われたサーキットサファリは、5分遅れてスタートするも、10分と経たずまたも雨量増加のため赤旗で終了。決勝レースに向けて不安を残すこととなる。

決勝レース(66周)15:00

フリー走行やサーキットサファリの後、いよいよ台風11号の影響は本格的となり、時おり強烈な雨が降るように。そこでスタート進行の開始と合わせて行われるウォームアップは8分間から20分間に延長された。しかし、終了間際にはあまりに強くなって、3分間を残して赤旗終了となる。

今回もスタートを担当する嵯峨選手が、「OGT Panasonic PRIUS」をグリッドに並べた時には、勢いを弱めて小雨になっていたが、予断は許されない。そこでまた雨が強くなることを見越して、装着されたウェットタイヤはソフトランクのものだった。レースはセーフティカースタートで始められることとなり、1周の先導だけでストレートのグリーンシグナルが灯される。

鋭いダッシュを決めた嵯峨選手は、トップ「SUBARU BRZ R&D SPORT」のインを1コーナーで刺そうとするも、しっかりガードされて逆転は許されず。同じJAF GTながらABSを備えることもあり、ブレーキングには一日の長があるためだ。それでもしばらくの間は2番手をキープし続けていたのだが・・・。予想以上に路面の乾きが速く、ソフトタイヤを履いた嵯峨選手のペースが徐々に鈍り始め、9周目に2台の先行を許すことに。なんとも皮肉なことに、その直後に雨は急に勢いを増して、セーフティカーが導入されることに。もう1周早かったなら、2番手を保っていたかもしれない。

7周の先導の後、いよいよ本格的に豪雨状態となってきたため、赤旗が出されることに。約30分の中断中は、まさに横殴りの強い雨が。この判断は懸命だった。そして後に天候も回復して、1615分にレースは再開。セーフティカー先導1周の後、バトルが仕切り直される。またも周回が進むにつれ、路面状態が回復していく中、もうピークを過ぎたソフトタイヤであるため、嵯峨選手は21周目まで4番手を保つのがやっと。セクター3で相次いで2台に抜かれた後、26周目には7番手に。そこで予定を早めて、29周目に新田選手と交代することになる。

いったんは20番手にまで後退したが、ライバルがピットに入るたび順位は上昇、早めの交代が失敗ではなかったのは明らかだ。そんな最中の38周目、1コーナーでオーバーシュートもあったが、ひとつポジションを落とすに留まったのは不幸中の幸い。41周目にはひとつ順位を上げ、44周目に全車がドライバー交代を済ますと「OGT Panasonic PRIUS」は6番手に。50周目に突入したあたりから、また雨が勢いを増していくが、新田選手はしっかりとコースに踏み留まる。だが、54周目にまた雨が横殴り状態となったことから、55周目には再びセーフティカーが。

残り周回はすでに10周を切っており、前後の差は詰まっているから、もし数周でもバトル再開となれば、逆転のチャンスもあれば、逆転される可能性も。微妙なところではあったが、ラスト1周となったところで、このままセーフティカー先導による終了がアナウンスされる。その結果、「OGT Panasonic PRIUS」は3戦ぶりのチェッカーを、6位で受けることとなった。次回のレースは3週間後、83031日に1000kmレースとして鈴鹿サーキットで開催される。第3ドライバーに中山選手を加え、再びたぐり寄せた流れで大逆襲を誓う。

新田守男選手

「あまりいいところがなかった感じのレースでしたね。雨の量とタイヤのチョイスが、この激しい天候変化の中で、ちょっとうまくいかなかったように思います。ただ、FIA-GT3など電子デバイスのついていないクルマの中では最上位でしたが、ちょっときつかったですね、こういう悪いコンディションの時にABSがないと。だけど、久々に完走はできたので、そこは良かった。今後はもうちょっといいレースがしたいですね。」

嵯峨宏紀選手

「ソフトのレインタイヤでスタートして、最初の4周ぐらいは良かったんですが、だんだん乾いてきてからはドロップも大きくて。後ろのクルマはミディアムとか硬いタイヤを履いていたので、ちょっと抑え切れないな、と思っていたところで大雨が来て、セーフティカーが入ったから、いいような、悪いような、どっちでもあるタイミングでしたね。あのままレースが進んでいったら、ミニマムのタイミングで入ろう、硬いタイヤを履こうと思っていたんですが。チーム、ドライバーとも最善の選択と判断で6位でしたから、これ以上の結果は今回なかったかな、という気もします。もともとプリウスはウェットを得意としていないんで、そういう意味では上出来だったかもしれません。」

金曽裕人監督

「天候に左右されたレースであったが、現在のパフォーマンスの中では、想定される順位のBESTであった。ドライバーの二人は相当難しい状況であったと思うが 完璧なPROの仕事をしたと思う。今後マシンの改良点として、このような雨レースでも表彰台を狙えるパフォーマンスを身につけなければならないと前戦同様に痛感したレースであった。DRYのレースならば….とは言ってられない状況である。まだまだシリーズは諦めていない。残り3戦は全て表彰台を狙う。」