2016 AUTOBACS SUPER GT ROUND 3

 

開催地:ツインリンクもてぎ(栃木県)/4.801km

 

1111日(公式練習)天候:雨のち曇り コースコンディション:ウェット

1112日(予選)天候:晴れ コースコンディション:ウェット 

1112日(決勝)天候:晴れ コースコンディション:ドライ 観客数:23,500

 

6番手走行中に無念のリタイア、王座獲得の権利は首の皮一枚に。

当初の予定では、スーパーGTシリーズの第3戦は、5月にオートポリスで行われるはずだったが、熊本地震の影響を受けて中止となったため、代替レースが最終戦と併せ、ツインリンクもてぎで「MOTEGI GT GRAND FINAL」として開催されることとなった。シリーズ初の1大会2レース開催とあって、スケジュールも変則的で、第3戦は土曜日のうちに予選と決勝を、そして最終戦は日曜日に予選と決勝を改めて行うというもの。そのため、公式練習も金曜日からのスタートとなった。

GT300クラスに挑むaprは、今年から2台のZVW50型トヨタプリウスを投入。ブリヂストンタイヤを装着する「#31 TOYOTA PRIUS apr GT」を、昨年に引き続き嵯峨宏紀選手と中山雄一選手がドライブする。3SUGOで初優勝を飾った後も、第6戦鈴鹿で2位、第7のタイでも5位と、積み重なるウエイトハンデも苦にすることなく、安定感も身につけつつある。

今回の第3戦はウエイト半減となり、前回の76kgから44kgに減ったこともあり、再び軽快なフットワークを披露してくれるだろう。その効果が、結果に結びつけば!ランキングこそ5位ながら、トップとの差はわずか10ポイント。2レース行われ、最大42ポイントもの加算が可能である上に、昨年、予選・決勝とすべてトップを取っている相性抜群のサーキットであるだけに、まずは大きな前進に期待が込められた。

公式練習セッション1 1111日(金)9:0010:00

通常とは異なり、今大会の公式練習は金曜日の午前、午後にそれぞれ1時間ずつ2セッションで行われた。当初の予定では、午前のセッション1で詰められるセットアップは44kgのウエイトを積んだ状態でのセットで、午後のセッション2では、最終戦対応のノーウエイト状態でのセットアップが詰められる予定となっていた。この違いは大きく、当然足回りのアライメントや車高など、同じセットのままではベストのフィーリングは得られないからである。

ところが、セッション1はあいにくの激しい雨模様。天気予報では午後には止んでしまうことが伝えられていたが、計測開始から2分後に嵯峨選手のドライブで「#31 TOYOTA PRIUS apr GT」がコースイン。まずはピットアウト〜インを行なった後、13分経過後に再びコースに挑んでいく。1周の計測の後、さらにペースを上げていった嵯峨選手だったが、ビクトリーコーナーでコースアウトし、最初の赤旗中断の原因を作ってしまう。

ただし、マシンにダメージは一切なかったことから、終盤には再びコースイン。雨もかなり弱くなっていたことから、そのままゴールまで走り続ける予定が、ラスト5分で3回目の赤旗が出てしまい、そのまま終了に。嵯峨選手は135319を記すに留まり、15番手となった。なお、このセッション1の終了直後に、セッション240分間延長が決定した。

公式練習セッション2 1111日(金)13:0014:40

セッション1の終了直後に案の定、雨は止んで路面状態は徐々に回復傾向に。それでも完全に乾くまでには至らず、ウェット宣言が出される中でセッション2の計測開始となった。ここで最初に「TOYOTA PRIUS apr GT」に乗り込んだのは中山選手。レインタイヤを装着して様子を見つつ、まずは周回が重ねられることとなった。一度ピットに戻った後、中山選手は157019にまで短縮を果たし、スタートから30分経過というところでピットに戻る。

この後、50分ほど路面の回復を待って、ピットで待機。しかし、皮肉なことに雨は再び降り始めてしまう。予選もウェットコンディションとなることを想定し、やがてピットを離れることとなり、アウト〜インを繰り返した後、中山は5周の計測ラップを行い、嵯峨選手に交代する。もう好タイムは望めないコンディションとなっていたが、それでも周回する毎にタイムを縮め、最終ラップには157391を記すこととなった。

公式予選 1112日(土)8:358:50

今回は予選のシステムも通常とは異なり、ノックアウト方式でQ1Q2が連続して行われるのではなく、15分間の一発勝負で、ふたりのドライバーのうち、どちらかひとりだけが挑むことになった。ちなみに、この第3戦でアタックを担当するドライバーは、最終戦の予選を走ることは許されない。#31 TOYOTA PRIUS apr GT」は、ここで嵯峨選手を投入。土曜日のツインリンクもてぎは、早朝から爽やかな天気に恵まれたものの、予選が始まる前の路面はまだ濡れたままだった。中にはスリックタイヤを装着した車両もあったが、わずか15分間では発動するまでには至らないとチームは判断。レインタイヤでのアタックとなった。

計測開始から一呼吸置いて、コースインした嵯峨選手はわずか12度の低い路面温度ということもあってウォームアップを入念に行い、計測3周目からコースを攻め込んでいった。まずは157731をマークして、次の周には56197にまで短縮を果たして3番手につける。なおも攻め続けた嵯峨選手ではあったが、ラストラップにタイムを縮めることはできず。その間に一台の逆転を許したものの、「#31 TOYOTA PRIUS apr GT」は2列目、4番グリッドの好位置から第3戦決勝レースに挑むこととなった。

嵯峨宏紀選手

「路面状態が微妙でしたが、15分間では乾かないだろうと読んでレインタイヤを選んで、持っているパフォーマンスを最大限に引き出して、僕らとしてはベストなタイムは出せたと思うんですが、正直言ってダンロップ勢には完敗、という感じですね。そういう意味では負けてしまったんですが、シリーズを考えると悪い位置ではないですし、決勝はいい天気でレースできると思いますので、気持ちよく走って最低でも表彰台には立ちたいし、あわよくば勝てるようなレースをしたいと思います。」

金曽裕人監督

「予選の内容は悪くなかったと思います。嵯峨選手もミスなく走って、クルマのパフォーマンスを最大限に引き出してくれて、この順位ですから。僕らの中でも満足度は極めて高いです。このコンディションではダンロップさんのタイヤが良かった、ということで、決勝に対してもいいポジションにつけることが出来たので、これをしっかり守って、さらに上に行けることだけを考えています。今の段階では持っている力を最大限に出せたと思うので、ドライバーにも、タイヤにも感謝しています。これ以上はありません、無理です(笑)」

決勝レース(53周) 1112日(土)13:15

今回の決勝レースは1大会2レース開催ということもあり、最終戦同様、通常より50km短い250km53周で争われた。「#31 TOYOTA PRIUS apr GT」のスタート担当は今回も嵯峨選手。予選での勢いがそのまま保たれることが、大いに期待された。

予選の後に今回はフリー走行が設けられない代わりに、決勝のスタート進行の開始と同時に行われるウォームアップ走行が8分間から15分間に延長。その1周目を中山選手が担当したのは、決勝をドライコンディションでのぶっつけ本番としないための配慮。すぐに嵯峨選手と交代して3周計測され、1488373番目に相当した。どうやら変化したコンディションへの対応も、問題ないようだ。

さて、その決勝レースだが、いよいよ完全なドライコンディションでの戦いとなった。ある意味、ぶっつけ本番ではあるが、それはどのチームも条件は一緒。むしろ総合力が問われることともなる。スタートは無難に決めてポジションキープとした嵯峨選手だったが、発熱に優れるブリヂストンのタイヤが威力を発揮し、90度コーナーで1台を抜いて3番手に浮上する。オープニングラップこそ、何の混乱もなかったが、2周目に入ると状況が一変。2か所でアクシデントが発生したため、5周にわたってセーフティカーランが実施される。

仕切り直された後も、嵯峨選手はポジションをキープ。しばらくの間は、2番手の車両の背後に着けて、逆転の機会を待ち続けていた。しかし、スタート時点で24度だった路面温度は、この頃27度まで上昇、予想以上にグリップダウンが著しく、徐々に2番手から離されていったこともあり、チームは早めのピットストップを決断。20周目に中山選手へ交代し、タイヤを4本とも交換する。

#31 TOYOTA PRIUS apr GT」がコースに戻ると、ポジションは17番手だったが、ランキングトップの「#25 VivaC 86 MC」の前とあって、ポイント差を詰めるには絶好の状況に。中山選手の調子も良く、24周目に1台、31周目にもまた1台を抜き、全車がドライバー交代を済ませると6番手に浮上。前を行く車両のほとんどはタイヤ無交換だったから、まだまだポジションを上げられる可能性は十分にあった。だが、43周目に中山選手は突然ピットに戻ってきた!

トラブルが発生してしまったためだ。だが、すぐに対処できる状態ではなかったため、チームはコースに戻す判断をしたものの、やがてギヤがスティックしてしまったこともあり、ピットで続行を断念。規定周回を満たしていたこともあって、24位完走扱いとはなった。

ランキングトップの「#25 VivaC 86 MC」が7位でゴールしたこともあり、首の皮一枚ではあるものの、まだ「#31 TOYOTA PRIUS apr GT」にも王座獲得の権利は残された。あと一戦、全力を尽くすことをドライバー、チームとも誓ったのは言うまでもない。

嵯峨宏紀選手

「明日はもう腹をくくって、博打なり何でもやれることをやって、いいシーズンを終えられるようにしたいです。決勝の序盤は悪くなくて、タイヤの温まりは僕らの方が良かったので、1周目のうちにスルッと前に行けたんですが、それからしばらくしてグリップダウンが予想よりも早く、後ろから追い上げられるような状況になってしまったので、早めに交代することとなりました。全部がうまくいっても5位ぐらいで、僕らが狙っていた優勝には届かなかったでしょう。せめて25号車(VivaC 86 MC)の前でゴールしたかったんですが、これがレースですね。今晩ミーティングをして、明日に向けてしっかりと作戦を練ります。まだ諦めてはいませんよ。」

中山雄一選手

「多分ミッショントラブルだと思います。リタイアするまでも、トップに絡んで行けるほどのスピードはなくて、ちょっと苦戦していました。いろんなクルマを抜きつつ、せめて6番手を何とか死守したいと思っていたんですが、トラブルで止まってしまったので、すごく残念です。チャンピオンの可能性がまだ無くなったわけではないので、まず明日はポールポジションを取って1ポイント獲得して、レースでも優勝して、それで25号車の順位次第でチャンピオンになれるんで、明日はもう全力でやるだけです。」

金曽裕人監督

「ミッション系のトラブルです。詳しいことは今チェックしている最中なのでわかりませんが、少なくても途中からギヤが入りにくくなって、最後はスティックして終わってしまいました。それまでの流れは悪くありませんでしたが、タイヤ無交換のチームに対して、僕らは勝てるパフォーマンスを持っていませんでした。現状では精いっぱいのレースになったのは事実ですが、せめて5番手でチェッカーを受けられていれば……。大事なレースを落としたというのは残念と言う以上に、悔しくてなりません。明日はもうミラクルが起きなければチャンピオンになれませんので、最終戦ということもあって、今までのような手堅いやり方ではなく、ギャンブルに打って出ようと思っています。」