2016 AUTOBACS SUPER GT ROUND 5

 

開催地:富士スピードウェイ(静岡県)/4.563km

86日(予選)天候:晴れ コースコンディション:ドライ 観客数:18,400

87日(決勝)天候:晴れ コースコンディション:ドライ 観客数:33,500人

 

進化を遂げた30号車。今後に期待を抱かせる 

スーパーGTシリーズ第5戦が、8月最初の週末に富士スピードウェイで開催された。

永井宏明選手と佐々木孝太選手がドライブし、タイヤはヨコハマタイヤを装着する、「#30 TOYOTA PRIUS apr GT」にとって、初めて2回目の舞台となる富士は、ゴールデンウィークに行われた第2戦で9位入賞し、相性の良さが証明されているコースでもある。また、ここまでの3戦すべて完走も果たしている。

しかし、回を重ねるごと求める目標が高くなっていくのは、ごく自然な流れであるはずなのだが、成績そのものは右肩上がりとはならず、前回のSUGOでは逆にダウン。18位に甘んじたことから、インターバルは2週間と短かったものの、マシンの進化を求めてデジタル解析を行うことに。これがどれだけ効果を発揮するか期待された。

公式練習 86日(土)8:5010:25

梅雨が明けてからというもの、特に8月に入ってからは全国各地で猛暑が伝えられるが、このレースウィークの富士も決して例外ではなかった。富士山の裾野、それも高めの場所に位置するせいで、太陽が近く感じられ、気温以上に日差しが強烈で、余計に暑さを感じるのだ。上空に雲が浮かんでいたり、風が吹いたりすればいいが、そうでない時は太陽に焦がされている印象さえ憶えるほど。どうあれ、過酷な戦いとなることは容易に想像できた。

土曜日の公式練習スタートは850分なのだが、もうすでに暑い。サバイバルゲームの始まりだ。まずはチェックを兼ねて、「#30 TOYOTA PRIUS apr GT」は佐々木選手が最初に走らせることとなった。開始から間もなくストップ車両があり、いきなり赤旗。まさに波乱含みのスタートに。

再開されてからは、佐々木選手が精力的に走り込んでいく。前半は予選モード。ショートスティントでの周回を重ね、ピットに戻るたびセットを変更。やがて138942と、その時点での3番手タイムを記すこととなり、その後は決勝モードでセットアップが進められていく。ほぼ1時間を経過したところで、再び赤旗が出て計測は中断。ちょうど大幅なセット変更を行っている最中だっただけに、まったく影響を及ぼさずに済む。

セッション再開後に再び佐々木選手は周回を重ね、納得のセットに仕上がったところで、永井選手にバトンを託す。計測2周目には140802をマークし、永井選手も好調そのもの。勢い余って最終コーナーでコースアウトするシーンもあったが、動揺の色はまったくなく、そのままコンスタントに141秒台でラストのほぼ30分間を走り続けた。その後のサーキットサファリでも永井選手は走り続け、最後の2周だけ佐々木選手がチェックを行って、午前中のセッションを無事終えることとなった。

公式予選 Q1 86日(土)14:2514:46

やはりと言うべきか、14時を過ぎて太陽が真上に上がると、気温はさらに上昇。気温は33度、路面温度は50度を超えていた。これだけ過酷な状態であれば、いきなり走り始めるより、他の車が走ってコンディションが整うのを待つ方が得策。そこでQ1担当の佐々木選手はしばらくピットで待機し、5分経過時から走行を開始する。ウォームアップをアウトラップだけでなく、その後の2周も加えてから佐々木選手はアタックをスタート。

セクターごと好タイムが刻まれていき、ピットで期待が高まる中、佐々木選手は138237をマークして3番手に浮上!公式練習で感じられた「#30 TOYOTA PRIUS apr GT」の仕上がりの良さが、改めて証明されることに。ただ本来ならば、この後もアタックを続け、さらにタイムアップの期待も込められたが、間もなく赤旗が出てしまい、その機会を奪われることに。再開後も佐々木選手は走行したものの、タイムアップならず。そのタイミングで1台の逆転を許したものの、4番手でQ1突破を果たすこととなった。

公式予選Q2 86日(土)15:1615:28

Q1の中断は、そのままQ2開始の遅れとなり、当初の予定より6分遅れでスタートとなった。早速ピットを離れた「#30 TOYOTA PRIUS apr GT」の永井選手は、佐々木選手からの指示どおり、アウトラップともう2周をウォームアップに充ててからアタックを開始。

まず139616をマークして自己ベストを更新すると、次の周には39529にまで短縮。明らかに乗れていることを思えば、さらにもう一発が期待されたものの、その時すでにタイヤはピークを過ぎており、タイムアップは果たせずに終わる。

その結果、「#30 TOYOTA PRIUS apr GT」は13番手に。とはいえ、あとコンマ1秒短縮すれば、プロドライバーを下し、ひとつポジションを上げることも可能だった。マシンの進化だけでなく、永井選手の進化も感じられたのは、もうひとつの収穫に。

永井宏明選手

「佐々木選手がQ1でいい走りをしてくれたので、久々に僕もQ2を走ることができました。クルマの状態はかなり良くなっていたので、僕も流れに乗りたいところでしたが、ニュータイヤの性能を最大限に発揮させるには、まだ少し力が不足していたかなと。そこを今後は修正していきたいと思います。決勝に向けては、淡々と走ってポイントを獲ることを目標とします。走行距離も伸ばすことで、熟練度を上げられたら、なお最高ですね。」 

佐々木孝太選手

「この短い間で、チームがクルマをいろいろ検証してくれた結果、これまでやってきた方向性が間違っていないということが分かったんで、そういう意味で迷いなく練習から走れたのは大きかったかな?と思います。決して完璧なラップではなかったんですが、まずはQ2に駒を進めることで、永井選手にももっと走ってもらいたい。という気持ちはあったので、まずは繋げられて良かったというのと、とは言えまだクルマも完璧な状態ではないので、ミーティングして、朝のフリー走行と決勝前の8分間を使って、より良いクルマに仕上げたいと思います。」

金曽裕人監督

「前回のレースを終えてから、これはクルマにデジタル的な解析が必要だと感じ、実際に行ってみたところ、タイヤを今まで使い切れていなかったことが分かったんです。今までは迷子になっていてね。ヨコハマタイヤのパフォーマンスをフルに使いきれるセットを、ようやく見つけることができました。実際に予選を見ると、佐々木選手はまだまだ行けると思いますし、永井選手に関しては、もっともっと行けるはず。というのは、これまでセットの出ていないクルマに合せようとして付いてしまったドライビングのクセを、いったんリセットする必要はあるでしょうが、そこは練習あるのみ。クルマの速さは見つかりましたが、タイヤのライフなどはこれからなので、重点的に朝のフリー走行でやっていかなくてはならないし、決勝のポイントはそのあたりにあると思います。」

決勝日・フリー走行  86日(日)9:009:30

決勝レースが行われる日曜日になっても、いっこうに暑さは衰えることなく、午前中のフリー走行は引き続きうだるような暑さの中で行われた。予選のコメントにもあるとおり、タイヤのライフなどを確認するという、重要なミッションがフリー走行には込められていた。まず「#30 TOYOTA PRIUS apr GT」を走らせたのは佐々木選手。計測開始と同時にピットを離れ、チェックを兼ねてピットアウト〜インを行い、その後は計測ラップを重ねて、140480をマーク。ラスト15分間は永井選手に託され、そのままチェッカーが振られるまで走行することとなった。141263をベストに、決勝想定タイムの41秒台でしっかり周回を重ねて、最終チェックの完了とした。 

決勝レース(66周)14:25

前回に続いて、スタートを担当するのは永井選手。スタート進行の開始と同時に行われる、8分間のウォームアップを走行して、まずは肩慣らし。走り終わった後の表情を見る限り、そう緊張はしていないようだ。今回も静岡県警の白バイ、パトカーによるパレードランが行われ、やがてフォーメーションラップへ。そして、グリーンシグナルの点灯と同時に、熱戦の火ぶたが切られていく。

オープニングラップで永井選手の駆る「#30 TOYOTA PRIUS apr GT」は、ひとつ順位を落としてしまったものの、特に混乱に巻き込まれることなく、無難な立ち上がりに成功。しかし、問題は後方から次から次へと、FIA-GT3が迫ってきたこと。エンジンパフォーマンスに優れるから、いくら永井選手がコーナーで踏ん張っても、ストレートであっさりかわされてしまうのだ。

それでも予想されたとおり、サバイバルゲームとなって接触やタイヤトラブルで順位を落とす車両が相次ぐ中、17周目にセーフティカーがコースイン。1コーナーの接触後、2コーナーでボンネットを飛ばしてしまった車両があったからだ。その時点で永井選手は18番手。すでにタイヤのグリップダウンは著しかったことから、気持ちをリセットする絶好の機会となってもいた。

また、SCランは予想外に長く、22周目まで及んでいたことから、規定周回の1/3をクリア。そこでピットレーンオープンとなった23周目に、永井選手をピットに呼び寄せることに。中位グループの車両が相次いで飛び込んでくる中、佐々木選手へと交代。ここで21番手となるが、中にはピットで順位も入れ替えた車両もあり、ピット作業も短かったのは明らか。しかも、そのあともアクシデントは相次いだことから、ほとんどの車両がドライバー交代を終えた31周目には、15番手に浮上する。

その後、12番手を争うグループの中で、佐々木選手は奮闘を続けるも、前にいるのはFIA-GT3ばかり。前半の永井選手同様、いくらコーナーで詰めてもストレートで離されてしまう展開が続き、まさに我慢の走りを強いられることとなった。最終的に15番手を守り抜いてフィニッシュ。トップから1周遅れでの完走を果たすこととなった。予選後の心配どおり、タイヤとのマッチングに苦労することとはなったが、完走を遂げたことでしっかりデータを確保。これは次回のレースに必ず生かされるはず。3週間後に控えた伝統の一戦、鈴鹿1000kmでの大逆襲を期待せずにはいられない。

永井宏明選手

「淡々と走れるクルマにはなったので、僕自身もうちょっとアベレージを出す、もうちょっといいラップができるように調整する必要性を感じました。あとはタイヤの磨耗を上手にコントロールできなかったので、それはチームとして、次回以降うまくコントロール出来るようにしたいと思っています。一戦、一戦やっぱり経験を詰めていますし、まわりとの間合いとかスペースの感覚とかは、勉強できているので次につながるようにって、いつも言っていますけど、本当に今回もそういうことでは一歩進めたんじゃないかと思っています。次の鈴鹿は地元なので、応援してくれる方もたくさん来てくれると思いますし、その期待に応えられるように、チームで結果を出せるように頑張ります。」

佐々木孝太選手

「だいぶタイム的にはそれなりに、トップがやっと見えるところまで上がってこられたと思いますが、タイヤのライフに関してはちょっとまだ厳しいものがあるな。という感じでしたね。ようやくクルマがいい感じになってきたので、これからはタイヤをちゃんとセレクト出来るのではないかなと、いい意味で見えてきたんですが、それだけに余計に悔しいですね。チームとしても、僕らとしても次回は地元の鈴鹿でのレースなので、そういう意味で今回得られたデータは絶対、次にフィードバックできるので、なんとかポイント獲得に向けて頑張ります。」

金曽裕人監督

「クルマのセットに関してはすごく良くなりましたが、それに対してタイヤのレンジを完全に間違えてしまいました。ここまで気温が高くなるとは想定していなかったので、もうワンランク硬いタイヤを使っていれば、展開は大きく変わっていたでしょう。今回はタイヤが完全にタレてしまったのが、非常に痛かった。ただ、タイヤが悪いのではなく、明らかに僕らの選定ミスでした。今までセットが出ていなかった分、柔らかめのタイヤでごまかせていたけど、セットが良くなったら、もっとしっかりしたタイヤでないと対応できなかったという……。とはいえ、ようやくタイヤとクルマが融合し始めて、次のステップが見えてきたので後半戦、特に次の鈴鹿1000kmが楽しみです。」