2020 AUTOBACS SUPER GT

ROUND 1 たかのこのホテル FUJI GT 300km RACE

 

開催地:富士スピードウェイ(静岡県)/4.563km

7月19日(予選)天候:曇り コースコンディション:ドライ 無観客

7月19日(決勝)天候:晴れ コースコンディション:ドライ 無観客

逆襲に期待のシーズンも、5番手走行中に駆動系トラブル抱え

それでも執念の感想果たす!


 新型コロナウイルスの影響で、大幅なスケジュールの変更を強いられていたスーパーGTは、当初の予定より3か月遅れで開幕戦、「たかのこホテル FUJI GT 300km RACE」が富士スピードウェイで開催された。

 今年もaprは引き続きTOYOTA GR SPORT PRIUS PHV(ZVW52)の2台体制で挑み、「#31 TOYOTA GR SPORT PRIUS PHV apr GT」をコンビ2年目となる、嵯峨宏紀選手と中山友貴選手に託す。タイヤは引き続きブリヂストンを使用する。

 本来、開幕戦は岡山国際サーキットで行われるはずだったが、関係者の移動中の感染リスクを最小限とすることを第一の対策とするため、開催地も大幅に変更。全8戦は従来どおりながら、富士スピードウェイで4戦、鈴鹿サーキットとツインリンクもてぎで2戦ずつの開催に改められている。したがって、今回のレースはシリーズを占う鍵ともなり、どれだけ有利に戦えたが、今後への大きな福音ともなるはずだ。

 昨年はマシンをミッドシップからFRに改め、予想以上の苦戦を強いられたが、2年目となるこのオフに徹底的に見直して大幅な改良を進めた結果、テストでも好調。巻き返しに期待がかかる。

公式練習 7月18日(土)17:15〜18:35

 レースウィークのタイムスケジュールにも大幅な変更があって、予選と決勝レースは日曜日に行う、事実上の1デイ開催となり、公式練習だけが土曜日に行われた。だが、このレースウィークの天気は荒れ模様で、搬入が開始された金曜日は絶えず雨が降り続き、土曜日も昼まで雨となる。

 だが、それ以降は雨がやんで、回復の兆しを見せ始めていたのだが、公式練習が近づくと今度は霧が発生。当初は16時から100分間の予定だったが、結局スタートを切ったのは17時15分。80分間の走行となった。

 もし日曜日の予選が行えなかった場合、この公式練習のタイムで決勝レースのグリッドが決められる。そのため、セットアップも重要ながら、どこかでタイムを出しに行く必要もあった。いつ雨がまた降り始めてもおかしくはなかったが、大きくコンディションが変化することはないだろうとチームは判断。

 まずは「#31 TOYOTA GR SPORT PRIUS PHV apr GT」に中山選手が乗り込み、セットアップを進めていく。当然、タイムは時間の経過とともに短縮されていき、1分37秒911が記録された後、嵯峨選手に交代。今回は中山選手を中心にメニューがこなされていったため、決勝セットの確認だけを行なった嵯峨選手のベストタイムは、1分38秒636となった。

 ラストの約20分間は、再び中山選手の担当に。ここからは速さも突き詰められて、中山選手は1分37秒370をマーク。その時点での5番手につける。ラスト10分間の単独セッションにおいて、さらなるタイムアップが期待されたが、終了間際の「おいしいタイミング」でクリアラップが取れず。それでも最終的に8番手につけて、昨年とは見違えるような進化を遂げたことを明らかにした。

公式予選Q1 7月19日(日)9:48〜9:58

 日曜日になると、それまでの不安定な天気はどこへやら。早朝の路面は一部に濡れた場所を残していたものの、もはや雨の心配はまったくなさそうだ。さて、富士スピードウェイでは初めて予選Q1が2グループに分けられ、「#31 TOYOTA GR SPORT PRIUS PHV apr GT」はBグループでの走行となった。このセッションを担当したのは中山選手。

 Aグループではウェットタイヤを装着していたドライバーもいたが、予想以上に乾きが早く、ことごとくタイムが伸び悩んでいた。そこで迷うことなく、中山選手にはドライタイヤでのアタックを選択。

 計測3周目からコースを攻め立てた中山選手は、1分36秒828をマークし、まだまだタイムアップの余地はあると判断、さらにワンアタックして1分36秒783にまで短縮を果たす。その結果、5番手につけて難なくQ1突破を果たすこととなった。

公式予選Q2  7月19日(日)10:23〜10:33

 続いて行われたQ2を担当したのは、もちろん嵯峨選手。中山選手からのインフォメーションを受け、より慎重にウォームアップを行なっていく。そして同じように、計測3周目からアタックを開始する。

 1分36秒921をマークした嵯峨選手もまた、続けてもうワンアタックしてタイムアップを狙うも、逆にタイムダウンしてしまう。それでも5番手につけて、「#31 TOYOTA GR SPORT PRIUS PHV apr GT」を3列目のグリッドに並べることとなった。

嵯峨 宏紀選手

 メカニックの皆さんが頑張ってくれて、去年より大幅にアップデートされた状態で開幕を迎えられました。その進化分は、去年の順位から考えたら、かなり大きいと思います。

 まだちょっとバランス的には今ひとつな部分もあって、1コーナーではオーバーランもしかけているので、点数をつけるなら70点とか80点。結果的に5番手なのでこの点数ですけど、走りの内容的には50点ぐらいかな。もうちょっとまとめなくては、という感じでした。

 決勝に向けては温度が上がってくるでしょうから、我々がチョイスしているタイヤにとってはマッチしていく方向に進んでくると思います。

 いつもの富士のレースと違って距離が短いので、ピットでタイヤを変えるか変えないかも含めて、戦略をうまく練って。なんとかポイントが取れるようにやっていきたいです。


中山 友貴選手

 コロナの影響から走行の機会がずっとなくて、かなり時間が空いていたんですが、久しぶりにレーシングカーに乗っても、すぐ自分の感覚を取り戻すことができました。同時にクルマもチームが頑張って、開発を止めずにいてくれたおかげで、テスト同様の手応えも感じています。

 僕はQ1行って、すごく難しいコンディションだったんですが、幸いBグループでしたから先のAグループで、チームがコンディションを見定めてくれたので、タイヤ選択もまったく問題なく、気持ちよくアタックさせてもらえたと思います。

 外観はほとんど違いがわからないでしょうけど、サスペンションとか見えない部分の変更点に、効果が非常に出ていてクルマとしてすごくスピードが上がっているので、乗っていても戦闘力の高さを感じます。決勝も頑張ります。


金曽 裕人監督

 オフシーズンに進化させたところが効いていますよ。車重を落とすことができたのが、クルマの軽快さにつながっていますし、トヨタさんの協力の下、エアロダイナミクスも風洞にかけたのが効いています。だから、クルマのパッケージはすごく良くなった上に、ブリヂストンもさらにすごいタイヤを出してくれているので、ようやくこのポジションまで来られました。

 それでもまだ、僕としては不満なところもまだまだあるので、セットアップだけでも、もうちょっと詰められるし、もうちょっと速くなると思っています。

 決勝レースは淡々と行きます、あえて欲をかかずに。大幅に改良したマシンパフォーマンスが、どう影響しているか確認します。

決勝レース(66周) 7月19日(日)15:00〜

 予選が終わった後に天気はさらに良くなっていき、スピードウェイの上空には晴れ間さえ広がっているようになっていた。併せて温度も上昇。気温は2度上がって26度、路面に至っては10度上がって39度にまで達していた。ただし、温度レンジの広さには定評のあるブリヂストンのタイヤを履く限り、そのことは不安要素とは一切ならない。

 20分間のウォームアップでは、スタートを担当する中山選手が最初に「#31 TOYOTA GR SPORT PRIUS PHV apr GT」に乗り込み、1分38秒114を記録した後、嵯峨選手にバトンタッチ。周回を重ねるごとタイムを上げて、1分20秒207に達したところでチェッカーが。8番手にあたるタイムとあって、決勝に向けて手応えも得る。

 決勝は、ポジションキープからの開始に。しかし1周目の100RでGT500にアクシデントが発生し、即座にセーフティカーが導入される。6周目にリスタートが切られ、中山選手のダッシュは悪くない。3番手を争う集団につけて、その後のポジションアップが期待された。

 ところが9周目、「#31 TOYOTA GR SPORT PRIUS PHV apr GT」が突然スローダウン。歩むようなスピードでピットに戻ってくる。駆動系のトラブルに見舞われたためだ。しかし、これでチームが諦めることはなかった。長い時間を要したものの、修復を行い、再び中山選手をコースに送り出す。その時、トップからは18周遅れとなっていた……。

 ペースは悪くない。修復後に記録されたベストラップ、1分38秒411はトップと比べてもコンマ3秒と遅れず。27周をこなしたところで、嵯峨選手と交代する。1分39秒台でコンスタントに周回を重ねる嵯峨選手にとっては、ひとり旅状態ではあったものの、独特のエキゾーストノートとともに存在感を強くアピールしていた。

 最下位、27位ではあったが、無事チェッカーを受けて完走。9周リタイアではなく、43周を走り抜いたことで得られたデータは数知れず。3週間後に行われる第2戦も、舞台は同じ富士スピードウェイ。ノーポイントだったから、ノーハンデであるメリットもきっと活かされ、今度こそ大暴れが期待できそうだ。

嵯峨 宏紀選手

 残念ながら、序盤に駆動系のトラブルが出てしまったので、僕はデータ取りのための走りになってしまったんですけど、その中でもペースはそんなに悪くありませんでした。起きてしまったことは、しょうがないということで、次のレースに向けて気を取り直してやっていきたいと思います。

 今年はレギュレーションが変わって、1ポイント×3kgになったので、今回ノーポイントだったところから『災い転じて福となす』ということもあると思うので、次は勝てるような状況にしていきたいです。

 ようやく戦えるところ、本来いるべき位置に来たのは間違いありません!!


中山 友貴選手

 9周目のダンロップコーナーで駆動がなくなってしまって、結果的に……。なんとかピットには戻れて良かったです。クルマのペースにはいいものがあって、展開を見ていてもかなり上位でゴールできたレースだったと思うので、本当に悔しい。

 ただ、めげずに次、この富士にもっと速くなって帰ってこられるよう、これから準備していきます。チャンスがあると思って頑張ります!


金曽 裕人監督

 ドライブシャフトが折れてしまいました。今まで折れたことはないのですが、違う開発の仕方、違うトライをしていたからで、クルマが速くなったというところで駆動系がついていけなくなったのかもしれません。次戦までの短期間にこの部分も改善いたします。

 流れは悪かったですけれど、ペース的にも良く、昨年とは大きく異なりクルマはしっかりパフォーマンスを発揮していると思います。

 マシン開発に専念し過ぎていた面もあり、レースを戦う情熱、勝気が足りなかったと反省しております。早い段階での表彰台が見えているのは事実です。今後にご期待ください!