2019 AUTOBACS SUPER GT

ROUND 3 鈴鹿サーキット

 

開催地:鈴鹿サーキット(三重県)/5.807km

5月25日(予選)天候:晴れ コースコンディション:ドライ 観客数:21,000人

5月26日(決勝)天候:曇り コースコンディション:ドライ 観客数:36,000人

今季初のフルドライ決勝で、入賞まであと一歩の11位で無事完走果たす

全8戦で争われるスーパーGTシリーズの第3戦、「SUZUKA GT 300km RACE」が鈴鹿サーキットで開催された。今年もaprは引き続き2台体制で挑むが、マシンをTOYOTA GR SPORT PRIUS PHV(ZVW52)にスイッチ。駆動方式をミッドシップからFRに改め、さらにハイブリッドシステムはそのままに、5.4ℓのV8エンジン、2UR-Gを新たに搭載する、「#31 TOYOTA GR SPORT PRIUS PHV apr GT」を嵯峨宏紀選手と中山友貴選手を託している。タイヤは引き続きブリヂストンを使用する。

 ここまでの2戦はいずれも天候に翻弄され、岡山国際サーキットで行われた開幕戦は赤旗で終了、富士スピードウェイの第2戦はウェットからドライに転じる厳しい状況の中、本領を発揮できたとは言い難いものの、決勝では確実に順位を上げられるマシンだということは明らかになっている。特に第2戦ではタイヤ選択の妙が裏目に出てしまい、いったんはほぼ最後尾まで後退したが、19位まで再浮上できたことは、チームにもドライバーにも今後に向けての自信となっていた。

 今回の舞台である鈴鹿サーキットはF1GPも開催される、日本を代表するサーキットであり、高速から低速までさまざまなコーナーが、2本のストレートとともにつなぎ合わされる、ドライバーにもマシンにも総合力を試される、チャレンジングなレイアウトで知られている。また、前2戦は公式テストを行った後の開催だったが、今回は行われていないため、チームには大いにイマジネーションを問う戦いともなる。

公式練習 5月25日(土)8:50〜10:25

前回のレースから3週間余りの短いインターバルを経て、乗り込んできた鈴鹿サーキットの週末は、まさに暑さとの戦いともなっていた。どうやら雨の心配はなさそうなのだが、公式練習スタート時の気温は25度、路面温度は34度と、とても5月とは思えぬ状況。話は前後してしまうが、終了時には28度、43度まで上がって、中には想定外だと嘆いていたチームもあったほど。

 そんな過酷な状況ではあったが、公式練習においてチームは普段以上にセットアップを入念に行っていた。それは、まさにトライ&エラーの繰り返しとでも言おうか。前回の決勝で得られた好印象をベースに施した持ち込みのセットから、何度も修正し続けて一歩一歩着実に前進し続けていた。

 今回も「#31 TOYOTA GR SPORT PRIUS PHV apr GT」に最初に乗り込んだ嵯峨選手は、序盤のうちに予選シミュレーションを行い、まずは1分59秒794をマーク。そこから少ない周回でピットイン〜アウトを繰り返していたのは、前述の理由にもよる。

 残りほぼ30分というところで、中山選手にバトンタッチ。たび重なるトラフィックによって、2分を切ることもできなかった中山選手ながら、好印象はつかんでいたよう。ラスト10分のGT300単独セッションには再び嵯峨選手が乗り込み、決勝セットでありながら、また路面温度が著しく上昇していたにも関わらず、最終計測で1分59秒630にまで短縮を果たすこととなった。

公式予選Q1 5月25日(土)14:40〜15:04

Q1を担当したのは今回も嵯峨選手。公式練習が終わった後、より強い日差しが注がれるようになり、気温は31度、路面温度は48度にまで上昇! これはもう、真夏も同然だ。となれば、タイヤにかかる負担を考えると1周にすべてを賭ける以外にない。嵯峨選手は3周のウォームアップの後、アタックを開始する。

 そして叩き出されたのは1分58秒720で、その時点での6番手につけることに。これで嵯峨選手は予定どおり走行を終了する。その後、赤旗中断があって、残り4分で再開されるが、その間に1台の先行を許してしまったとはいえ、7番手は今季ベストリザルト。そして、「#31 TOYOTA GR SPORT PRIUS PHV apr GT」としては、初めてのQ1突破に成功する。

公式予選Q2  5月25日(土)15:34〜15:44

 Q1で赤旗中断があったため、当初の予定より9分遅れでQ2は開始された。初めて「#31 TOYOTA GR SPORT PRIUS PHV apr GT」で予選に挑んだ中山選手ではあったが、気負いの様子はまったくなさそう。それは長年の経験の賜物と言えるだろう。「ウォームアップは1周減らした方が良さそう」との嵯峨選手のインフォメーションを受け、2周のウォームアップ後に中山選手はアタックを開始した。

この判断が的確だったのは、1分58秒582にまでタイムアップを果たしたことでも明らか。その結果、「#31 TOYOTA GR SPORT PRIUS PHV apr GT」は13番手につけ、7列目から決勝レースに挑むことが決定した。

嵯峨 宏紀選手

まずはQ1を今年初めて突破できて良かったです。今回はマシンの骨格を大幅に変えてきて、それがうまくいった感じではありますね。とはいえ、まだまだテストの段階のようなものであるので、本当の実力にはたどり着いてはいません。決勝では中山選手と、気を抜かずに走ろうと思っています。



中山 友貴選手

だいぶ戦えそうな雰囲気になってきて、今まで足りていなかった部分を補えてきたな、という感触はあります。とりあえず、このクルマでニュータイヤを履いてアタックしたのは初めてで、その中では悪くなかったと思います。前回の決勝は後半が良くなかったんですが、今回はふたりでしっかり走りきれれば、次につながるかなと。まずはそこが重要だと思います。


金曽 裕人監督

ようやくQ1を突破できましたが、まだ速くないし、まだ満足できるところにはいないですけれど、方向性が分かったことで、この結果を得られたのだと思います。我々は2台で戦っているので、もう1台とは違ったセットを予選でも試してみて、どちらがいいか見ようとなって31号車の方が良かったという感じでもあります。でも、2台とも良い方向にはあって、かなり深いところまでクルマは来ています。細かいところですごく反応するようになったし、クルマの持っている素性はすごく見えてきましたので、決勝にもご期待ください。

決勝レース(51周) 5月26日(日)14:30〜

決勝レース前の20分間のウォームアップ走行は、前回に引き続きスタートを担当する中山選手からの走り出しとなった。まずは入念にコンディションチェックを行い、ほぼ折り返しのところで嵯峨選手とチェンジ。2分1秒台を連発したうちのベストタイム、2分1秒747は9番手となった。

 今回は今年初めて白バイとパトカーによるパレードランが、フォーメイションラップの前に行われた。というのも前2戦は、いずれもセーフティカー(SC)スタートとされ、パレードランは中止になっていたからだ。上空には薄雲も広がっているが、これは降雨をもたらすものではないという。気温は28度と土曜日よりわずかに下がっただけだが、路面温度は42度と5月本来の状況になった感もあった。

背後にはストレートパフォーマンスに勝るFIA-GT3勢がズラリ並んでいたものの、そつなくスタートを決めた中山選手は、まずはポジションキープからレースを開始する。その後は前後の車両と一進一退の攻防を重ねながら、13番手のまま周回が進んでいく。そんな中、サーキットに緊張が訪れたのが18周目。GT500車両にクラッシュがあり、SCが導入されたからだ。その先導は3周にわたり、すでに規定周回の1/3を過ぎていたことから、多くの車両がすぐにピットに戻るも、「#31 TOYOTA GR SPORT PRIUS PHV apr GT」は混乱を避けるため、2周だけコースにステイ。

そのタイミングは正解だったものの、予想通り給油時間がかかってしまい、嵯峨選手がコースに戻ると大きく順位は落ちていた。それでも嵯峨選手は28周目に2台を相次いでかわし、全車がドライバー交代を終えた時には、まずは16番手に。35周と38周目、そして39周目にオーバーテイクを繰り返し、さらに41周目はタイヤが悲鳴をあげた車両が2台もピットに戻ったこともあり、ついに11番手にまでたどり着く。

だが、入賞まであと1台が厳しかった。前を行くのは同じエンジンを積むレクサスRC F GT3とあって、差を詰めることが許されなかったからだ。せめて先行車両に後退があれば……との思いは届くことなくチェッカーが。しかし、トップと同一周回でゴールできたことで、得られた収穫は極めて大きい。次回のタイ、チャーンインターナショナルサーキットでの戦いに、寄せる期待が一層大きくなったのは言うまでもない。

嵯峨 宏紀選手

今回は後半スティントを担当して、レース前半の展開は悪くなかったんですが、給油時間の問題から、僕がピットアウトした時には後ろにいた車両に何台も先行かれてしまって、それを抜き返すのに時間がかかってしまったのが痛かったですね。そういう展開の中、あと1台というところで入賞を逃してしまいました。ただ、やれるだけのことはやりましたし、週末を通じては今までより確実に良くなっているので、チームと力を合わせて、次のレースではもっと戦えるように頑張ります。


中山 友貴選手

最初の方のフィーリングは非常に良かったんですが、タイヤの磨耗が進んで行った時のフィーリングの変化が大きく、思ったよりもペースを維持するのが大変でした。ただ、後半スティントに向けて、できることは少ないので、内圧の変更はチームに伝えて。結果的に11位だったので、もう1台抜いていれば……という悔しさはありましたけど、本来そういう悔しさを噛み締めているチームではないので。きっちりとドライコンディションで1レース走り切ったのは、初めてなんですよ、このクルマは。しっかり走りきれたことで次につながるものがたくさんありましたし、僕の中でもタイヤやマシンの理解度も高まりましたから、次からは序盤から踏んでいけそうです。


金曽 裕人監督

本当はポイントを獲りたかったですし、獲れるはずだったんですが……。友貴の時も宏紀の時も決して悪くはなかったけれど、まだクルマとしてまとまりきっていない部分はあるし、進化させなければいけない部分もありますから。何よりの問題は給油時間が長かったこと。そこに対しての改善をしていかないと、これからいつもピットで逆転されてしまいます。このあたりはなんとかしたいところです。とはいえ、やっとまともにレースできたことで見つかった問題点は、次のレースまでに改善しますので、タイのレースをご期待ください。