2019 AUTOBACS SUPER GT

Round 5 FUJI GT 500mile RACE

 

開催地:富士スピードウェイ(静岡県)/4.563km

8月3日(予選)天候:曇り コースコンディション:ドライ 観客数:22,500人

8月4日(決勝)天候:晴れ コースコンディション:ドライ 観客数:38,100人

またしても現れたSCトラップ……。完走果たし、また進化に新たな方向性見出す

タイから再び舞台を日本に戻し、スーパーGT第5戦「FUJI GT 500MILE RACE」が富士スピードウェイで開催された。今年もaprは引き続き2台体制で挑むが、マシンをTOYOTA GR SPORT PRIUS PHV(ZVW52)にスイッチ。駆動方式をミッドシップからFRに改め、さらにハイブリッドシステムはそのままに、5.4ℓのV8エンジン、2UR-Gを新たに搭載する、「#31 TOYOTA GR SPORT PRIUS PHV apr GT」を嵯峨宏紀選手と中山友貴選手を託している。タイヤは引き続きブリヂストンを使用する。

 前回は予選こそ23番手だったものの、決勝ではタイヤのポテンシャルを活かしつつ、コンスタントに周回を重ね、次第に順位を上げていったのだが、ドライバー交代から間もなくクラッシュ車両を回収するためセーフティカー(SC)が導入され、不運にもまだピットに入っていない暫定トップ車両の後ろに並ぶ羽目に……。これで実質ラップダウンとなり、さらに大きく順位を上がることは阻まれたが、しっかりとレースを走り抜き、18位という結果以上に貴重なデータを積み重ねることに成功している。

 今回は500マイル、すなわち約800kmのシリーズ最長のレースであり、途中4回のドライバー交代を伴うピットストップが義務づけられる。強烈な暑さに見舞われることは必至で、過酷なレースではある一方、大量得点も可能なレースとあって、シリーズの大一番となりそうだ。

公式練習 8月3日(土)8:50〜10:25

 7月の半ばまでは曇天続きだったのに、8月の声が聞こえてきた途端、全国各地が猛暑続き。この週末も例外ではなく、強烈な暑さの中での走行となった。公式練習のスタートは8時50分。なのに、もう気温は28度、路面温度は31度に達し、その後も次第に上がっていった。

 今回、最初に「#31 TOYOTA GR SPORT PRIUS PHV apr GT」をドライブしたのは中山選手。普段以上に入念なセットアップ、タイヤ選定が行われたこともあって、公式練習はすべて中山選手が周回を重ねることとなった。走行開始から間もなく1分40秒229をマークした後、赤旗中断を挟み、1時間ほど経過した後は3回アウト〜インを続けたあたりは、理想のバランスをつかもうという思いの表れだ。そして、最後の計測ラップに中山選手は1分40秒187を記録することとなった。

 その後、行われたサーキットサファリから、嵯峨選手が走行を開始。バスがコースを離れる直前に一度だけピットに戻っただけでセッションをフル活用。終了間際に1分40秒845を記していた。

公式予選Q1 8月3日(土)14:50〜15:05

今回もQ1を担当したのは嵯峨選手。気温は31度、路面温度は40度にも達し、より過酷な状況になった中、いきなりアタックするのではなく、入念にウォームアップを行なっていたのは、決勝レースも配慮したタイヤ選択だったからに他ならない。

 計測3周目からアタックを開始した嵯峨選手は、まずは1分39秒358をマークして、このレースウィーク最速タイムをマークする。その後1周クールダウンを行なって、再度コースを激しく攻め立てる。続いての周回こそ1分39秒638に留まったものの、ラストアタックでは1分39秒370。あと一歩のところでタイムアップならず。ベストは尽くした嵯峨選手ではあったが、トップは1分37秒台にも到達しており、26番手という結果に甘んじた。

嵯峨宏紀選手

アタック自体はほぼノーミスで、珍しいぐらい自分の中でも決まったアタックだったんですが、ポジション的にはあのあたりまでしか行けなかった。シフトダウン時のレスポンスが悪く、思うようにブレーキでタイムを詰めることが出来ないのが現実。この問題をドライバーでは改善できないので、ない物ねだりしてもしょうがない。今持っているパッケージの中で、ドライバーとしてできる限りのことを決勝でやっていこうと思っています。


中山友貴選手

公式練習ではマシンを詰め切ることができず、予選でもちょっと方向性を変えて、嵯峨選手にQ1行ってもらったんですが、それもあまり良くはなかったようで……。問題として明らかになっているのは、嵯峨選手のコメント通りで、それによってニュータイヤの一発タイムが出ないこと。まだタイヤとクルマのいい部分を出し切れないところがたくさんある一方で、ロングランになると割と安定して走るところがあるので、決勝でそのあたりをさらに伸ばせていければ。戦略面も含め、クルマのバランスが良くなるよう話し合いはしたので、しっかりチェッカーまでクルマを運ばせたいと思います。


金曽 裕人監督

2台で、それぞれ違った大きなトライをしてみて方向性を探ってみたのですが、結果的に31号車に関しては正解ではなかった反面、ようやくこちらに進むべきだ、というのが明らかになりました。予選までそういう状況だったので、嵯峨選手には申し訳なかったんですけど、理解度が増したからには、これからどんどん進化していくと思いますので、今後にご期待といったところです。ただ、我々だけでは解決できない大きな課題もあるのが悩みですが、その中でベストを尽くします。

決勝レース(177周) 8月4日(日)13:40〜

スタート進行の開始と同時に行われる20分間のウォームアップは、嵯峨選手からの走行となった。ピットロードのオープンと同時に走行を開始し、すぐピットに戻って中山選手とのドライバー交代の練習を行うことに。当初の予定では、そのまま最後まで中山選手が走り続けることになっていたが、赤旗による10分間の中断が。想定どおりの連続周回はできなかったものの、1分40秒671を記録し、決勝に向けてはまずまずの手応えを得ることとなった。

 赤旗中断によって、その後のスケジュールはすべて10分遅れとなり、13時40分に決勝レースが開始される。気温は33度、路面温度は51度にまでついに達した、極限の状態の中、スタート担当の中山選手はオープニングラップのうちに、まずは2ポジションアップに成功。ただし、今は我慢の時と先行する車両とペースを合わせて周回を重ね、アクシデントを抱えた車両が現れるたび、順位を上げて行く格好としていた。

26周目、「#31 TOYOTA GR SPORT PRIUS PHV apr GT」は最初のピットストップを行い、嵯峨選手をタイヤ無交換で送り出す。ロスを最小限としたことで序盤とほぼ変わらぬポジションで、レースに復帰した一方で、40周を過ぎたあたりからペースが鈍り始め、何度も後続車両の先行を許すこととなってしまう。どうやら無交換作戦が裏目に出てしまったようだ。

そこで60周目、2回目のピットストップ以降はすべてタイヤを交換することに作戦を切り替え、中山選手にスイッチ。そこからは再びコンスタントに周回を重ねるようにはなったのだが……。それから8周後、GT500車両のアクシデントによってSCがコースに入るが、まだ2回目のピットストップを終えていない暫定トップの後ろにいたという、またしても不運に見舞われてしまう。取り返せない1周の差がついたことで、これで勝負権が失われる。

 それでも諦めることなく、「#31 TOYOTA GR SPORT PRIUS PHV apr GT」は周回を重ねていき、95周目に嵯峨選手への、そして129周目に中山選手への最後の交代を行なった。途中にもう一度、SCランがあったことから最大延長時間に達し、当初の予定より2周早いチェッカーとなったが、「#31 TOYOTA GR SPORT PRIUS PHV apr GT」は160周の走破を果たし、18位でフィニッシュ。

 もちろん納得のいく成績ではないが、5時間近い長丁場をノートラブルでしっかり走りぬいたことで、また多くの収穫を得ることとなった。次回のレースはオートポリスとなるが、翌週にはスポーツランドSUGOでの公式練習が開催され、もちろん「#31 TOYOTA GR SPORT PRIUS PHV apr GT」も参加の予定。今回、見つかった課題をしっかりテストでクリアすることができれば、オートポリスではきっと巻き返しを図ってくれるだろう。

嵯峨宏紀選手

無交換のスティントは思っていたよりペースが上がらず、苦しいレースになってしまいました。シフトダウン時のレスポンスが悪く、リアタイヤのロックを繰り返した事から摩耗がきつくて悪戦苦闘。その間にSCがちょうど周回遅れになるところで入っちゃって、もうどうしようもなくなってしまいました。そもそも予選の順位が響き、そういう状況……。次のSUGOテストもあるし、何とか、一発タイムに対して改善させたいと思います。


織戸 学選手

決勝のペース自体は非常に良くて、いろんなトライしたことが染みついてきて、だんだんと力はついてきているのですけど、予選でやっぱりニュータイヤのピークグリップっていうのを、まだクルマで引き出せていないことが、決勝にも影響してしまったという感じですね。SCのタイミングで遅れを取ってしまったのも予選順位が悪かったことが影響していると思うので、すごく厳しい戦いになってしまいました。とはいえ、またひとつクルマとしては進化したと思うし、来週のテストでしっかりとクルマを良い状態にしていって、後半3戦に臨みたいと思います。


金曽 裕人監督

決勝に関して大失敗だったのは、2スティント目をタイヤ無交換で行ったことでした。タイヤとしてもパフォーマンスはありましたが、ブレーキで自らタイヤを減らしてしまう悪循環を繰り返してしまった。それとSCとの間の悪さ。2戦連続です。そこで周回遅れとなったことで勝負権を早々に失ったことで、残念な結果になってしまいました。運も悪かったですね。

 ただ、その後は全部タイヤを換えていって、クルマの動きとか何か足りないところも分かったし、今のクルマのパフォーマンスに底力はあるのが理解できましたので、その底力をしっかり形にして行きたいと思います。見えないものを必死に見にいって、ようやく見えてきたレースだったので、僕自身の満足度、それと進化の可能性はものすごく高かった。 改善を繰り返し結果に早く結びつけたいと思います。そのためにも不眠不休で必死に努力していきます!